いぼ痔(痔核)は、肛門輪付近に発達した直腸静脈叢の静脈瘤のような変化で、しばしば炎症を併発し、血栓性静脈炎の形をとることがあります。きわめて多い病気で先人の50%以上にみられます。
主な発生部位は、肛門輪を時計の文字盤にたとえると、3時、7時、11時の部位です。
痔動脈から流れてきた血液は直腸静脈叢を通って、上直腸静脈から門脈に戻りますが、肝硬変で門脈圧が亢進していたり、妊娠などで腹圧が高まっていると血液の戻りが悪くなって鬱血し、粘膜下に静脈瘤をつくってきます。静脈瘤が繰り返して起こり、また肛門粘膜から大腸菌などの感染を受けると血栓ができ、さらに硬くなっていぼ痔(痔核)となります。
排便時に粘膜に傷がついて出血する症状が最も多く、出血の程度はわずかに紙につく程度のものから、ポタポタ落ちるもの、ほとばしり出るものまで、いろいろあります。
少量の出血でも毎日くり返していると、ひどい貧血が起こり、動悸がして階段が上がれないくらいになってしまいます。いぼ痔(痔核)が大きくなると排便時に脱出し、軽いうちは少し押し込めば戻りますが、重症になると歩行時にも脱出して休まないと歩けなくなります。いぼ痔(痔核)は感染により炎症を起すと排便時に著しい痛みが起こり、炎症性のいぼ痔(痔核)が脱出して、肛門括約筋の収縮により戻らなくなることがありますが、これをいぼ痔(痔核)嵌頓といいます。激烈な痛み、発熱、排尿障害などが起こります。
いぼ痔(痔核)は周期的に憎悪と軽快を繰り返し、便秘、飲酒、長時間の起立などにより憎悪することが多くあります。憎悪した場合を痔核発作といいます。
体質的なことも関係しますが、そのほか便秘、妊娠、日常かたいイスにすわって冷えること、長時間自動車を運転することなどが原因となります。酒や辛いものは、いぼ痔(痔核)を悪化させます。
応急手当として、いぼ痔(痔核)が脱出して嵌頓したときは傷に用いる軟膏をつけてから、できるだけ肛門に中に押し込むようにします。嵌頓が強くて押し込めない場合には痛み止めを服用し、もし抗生物質があれば1回分服用して、局所には軟膏を塗り、リバノール液、なければ水で湿布をし、安静にします。
しかし、いぼ痔(痔核)があるかどうかということは誰にもでわかりますが、それに隠れて悪性の病気があるかどうか、痔瘻(ろう)などを合併していないかどうかが重要なので、必ず外科専門医または、直腸・肛門専門医の診断を受けなければなりません。診察を受けずに薬局から薬を適当に買ってきて用いたり、民間療法のみに頼ったりするのは、よくありません。
出血がつづき貧血で倒れたときには、早急に手術を行い、輸血を必要とすることもあるので、外科病院に入院する必要があります。
痔核の治療法は種々ありますが、痔核という静脈瘤に起こった炎症、破れたために起こる出血をどのようにして治すかに尽きます。その方法は、便秘の解消、消炎剤、消炎酵素剤の内服、抗生物質の内服、血管収縮剤、収れん剤、鎮痛剤、副腎皮質ホルモンなどの局所療法、手術などです。
痔核発作をときどき繰り返すだけで進行性のないものは、座薬や軟膏を局所に使用し、ときに消炎酵素剤を内服します。最もたいせつなのは便秘をしないように注意することです。
一般に痔核発作時は炎症を伴うので、抗生物質を使用するのも効果的です。
痔核の手術は、薬などでは軽快しないくり返す出血、頑固な痛みおよび脱肛がある場合に行いますが、上直腸動脈の末梢である痔動脈を切断し、痔核を摘出する手術が普通です。
痔核を引っぱり出して輪ゴムで結ぶ方法、痔核の静脈瘤に軽い炎症を起させるために刺激性の薬を痔核局所に注射する方法は、短時間で処置のすむ利点はありますが、ときに炎症が起こってかえって悪化し、激しい痛みが起こることがあります。また痔核が再発しやすいので、特殊な場合以外は行わないほうがよいでしょう。痔核の手術は近年非常に進歩し、抗生剤の併用などで、手術後の痛みは一般に伝えられるほどひどいものではなくなりました。また再発も少なくなっています。
痔核手術のあと肛門粘膜の傷が完全に治るには3〜4週間かかるので、その間は排便後は必ず温湯で洗って肛門部を清潔に保ち、就寝前に座薬を肛門に挿入し、排便後は軟膏を塗布しておきます。また便通を正しくしつけ、日常生活に注意します。
痔核は、日常生活のあり方を密接な関係がありますが、一般に慢性の経過をとり、ときどき痔核発作を起すものが最も多いようです。このような例では、長年にわたって進行性の変化をほとんど示さず、日常生活や業務に支障をきたすこともありません。しかし、中には痔核の炎症、脱肛、痔核嵌頓、頑固な排便時出血を起すなど進行性に憎悪し、労働はもちろんのこと歩行に差し支えるような例もあります。痔核の憎悪には体質的な要素があるようで、痔核の手術を行っても、日常生活に注意しないと再発することがあります。
常に肛門部を清潔に保ち、局所の血液循環をよくするため、毎日入浴し、かたい冷たいイスに長時間かけることを避けるようにします。飲酒は、肛門直腸粘膜の炎症を助けるので厳禁し、食事も刺激性の食品が避けます。
妊娠中は、大きくなった子宮に圧迫のため肛門部が鬱血するので、痔核が悪化しやすいのですが、毎日便通をつけ、できれば洋式便器で排便するのがよいでしょう。あまり悪化しないうちに正しい座薬、軟膏療法を行います。